熱帯夜には高齢者の睡眠対策を
ブログ2025.08.20

夜になっても気温が下がらない日々が続いています。
「暑くて寝苦しい」「夜中に目が覚める」「朝も疲れが残っている」と感じている方も多いのではないでしょうか。
皆さまが体感している通り、夏は日差しの強さや寝苦しさによって快適な睡眠が取りづらくなり、生活リズムが崩れやすい季節。
睡眠不足は全世代的に夏バテの原因となるため対策が大切ですが、特に気を付けていただきたいのがご高齢の方です。

以前の記事「人生100年時代「要介護」を予防しよう!」でも触れましたが、高齢者は心身の機能が低下すると要介護状態になる前段階「フレイル」と呼ばれる状態になってしまうこともあるため、体力低下・気力減退に繋がる睡眠不足や生活リズムの乱れは健康の大敵と言えます。
今回は「高齢者の夏の睡眠」についてお伝えしますので、ご自身の習慣の見直しやご家族への声掛けに是非お役立てください。
体や脳の疲労回復には「ノンレム睡眠」が大切
質の良い睡眠をとるために、まずは睡眠のメカニズムを知ることが大切です。
睡眠には脳が活発に動いて夢を見ることが多い「レム睡眠」と深い眠りで体や脳の疲労回復に重要な「ノンレム睡眠」があり、この2つが約90分周期で一晩に数回繰り返されることで、質の良い睡眠が得られます。

一般的な睡眠経過の流れを見てみると、入眠直後に深いノンレム睡眠が見られ、何度かレム睡眠との交代を繰り返しながら段々と眠りが浅くなっていますね。
身体や脳の疲労回復には、入眠後の数時間が大切なのです。
一般的に健康的な睡眠時間は7時間程度とされていますが、この睡眠時間にも年齢差や個人差がありますので、寝起きの熟睡感などを考慮して、昼寝が必要かどうかなどを総合的に判断しましょう。
眠りやすい環境を整える睡眠対策
睡眠対策では「眠りやすい環境を整える」ことが非常に重要です。
ご高齢の方は体温調節機能が低下していて暑さや寒さを感じにくく、「夜はエアコンを使用しない」という方もいらっしゃいますが、昔に比べて暑い夜が増えているため、熱中症や睡眠不足対策としてエアコンは最早必需品と言えます。
冷えすぎないようにエアコンを活用
暑さ・寒さを感じにくいと室温の調整が難しいため、26~28度を目安に、冷房を付けましょう。

冷えすぎると逆に体調を崩す原因になってしまうこともありますので、下記のような冷やしすぎない工夫も大切です。
- 風が直接当たらないように風向きを調整する
- 「入眠後2〜3時間だけタイマーで冷房を入れる」「その後は除湿(ドライ)に切り替える」など、タイマーを活用する
寝苦しさの原因として空調の効きが悪い場合や「湿度」の不快さがある可能性もありますので、温度・湿度計などを寝室に置いて寝る前に確認することもおすすめです。
服装で冷やしすぎを防ぐ
エアコンで体を冷やしすぎないよう服装で調整しましょう。

おすすめは薄手の通気性の良い長袖のパジャマや、綿素材の腹巻など。
綿素材は汗を吸収・放出してくれるため蒸れにくく、夏の冷え対策に効果的です。
夜間頻尿対策も
「夜間頻尿で夜何度もトイレに起きてしまう」ことも度々目を覚ますことになり、睡眠の質を下げる原因になってしまいます。

対策としては、夕食後の水分摂取を控えめにしたり、利尿作用のある飲み物(緑茶やコーヒーなど)は夕方までにしたりすることが挙げられますが、「脱水予防!夏を乗り切る効果的な「水分補給」」でもご紹介したように高齢者は脱水が重症化しやすいため、「脱水予防」も同時に考慮する必要があります。
かかりつけ医に相談して、夜間頻尿のお薬を見直すことも有効です。
生活リズム対策で睡眠の質を高める
「暑さの影響で夜に眠れず、うとうと昼寝する時間が増えてしまう」
そんな「昼夜逆転」も高齢者によく見られます。
夏は日照時間の変化や日中の活動量の減少で生活リズムが崩れがちですので、是非あわせて対策して睡眠の質を高めましょう。
朝日を浴びて体内時計をリセット

毎朝起床後1時間以内にカーテンを開けて朝日を浴びるようにしましょう。
朝日は体内時計をリセットして体を活動状態へ導く効果があり、夜も自然と眠くなりやすくなるため、健康的な睡眠サイクルにつながります。
昼寝は30分以内に

昼寝は午後の活動性を高めてくれますが、長く寝てしまうと夜に眠れない原因となり、昼夜逆転の悪循環が始まります。
昼寝は15~30分を目安に短くとることがおすすめです。
暑い時こそ外出習慣を維持して快適な睡眠へ
「暑くて外に出たくない」「デイサービスやリハビリに行く気が起きない」
最近の厳しい暑さでは、そんな風に感じる日も少なくありません。
しかし、活動量が落ちると夜に寝付きにくくなることがあるため、さらに体力や気力が落ちていく原因になってしまうことも。
暑い時は体調と相談をしながらも、外出習慣をできるだけ維持して夜にしっかり眠れるようにしましょう。
短時間でも“外の空気”に触れる
風の流れや光、音、土の香り……短期間でも外の空気に触れることで屋外ならではの刺激を受けることができ、気分転換になります。

身体が暑さに慣れていないと熱中症の危険もありますので暑さ対策は欠かさずに、玄関先やベランダに5分出ることから始めてみてはいかがでしょうか。
送迎サービスや冷房の効いた屋内で活動できる「デイサービス」
デイサービスでは送迎サービスを行っていることが多いため、快適に涼しい館内まで移動することができます。
涼しい場所でなら体を動かすのも気持ちが良いものです。
体操やおしゃべりなどの楽しい活動は、体だけでなく心の健康にもつながります。

しっかり活動できれば夜も寝付きやすくなりますので、暑い中でも無理なく活動できるサービスを活用しながら心身の健康を保つこともおすすめです。
家族の声掛けが後押しに
ご高齢のご家族が外出への気力を無くしている場合には「今日は○○さんと会えるかもね」「お昼ご飯が楽しみだね」など、前向きな声掛けを行うことも大切です。
外出に不安が多い方もいらっしゃいますが、楽しみができることでご本人の気持ちも動きやすくなり、前向きに外出しやすくなります。

暑さに負けず、快眠で心身を元気に
夏は体力も気力も落ちやすい季節です。涼しさによって快眠を確保し、生活リズムを整える工夫を続けることが、心身の元気を保つカギになります。
ご家族の方も、是非ご高齢の方の日々の様子に目を配り、声かけや見守りをお願いします。

また、体調面や栄養面などで不安がある場合には、草花クリニックへご相談ください。
当院では総合診療専門医が2名在籍しており、複数の疾患を持つご高齢の方の体調不良にも全身を幅広く診ることで「地域のかかりつけ医」として対応できる環境を目指しております。
まずはお気軽にご来院ください。